「侫」(ねい)
才知にたける/口先がうまい/おもねる/へつらう
あまりいい意味ではない「侫」。正直、こんな人とは付き合いたくないですね(苦笑)。
だけど、これが自分のことを言われているのだとしたら……。へ?何のこと?まさか……!
室町時代に書かれた「人国記」という日本各地の人の特徴をその土地の風土と結びつけて説明してある書物があります。
かの武田信玄も愛読していたようで、江戸元禄時代には地図も追加された改訂版が全国に流布されました。
実は、この「侫」は、越中国の人の特徴のキーワードです。
人国記は、どの国のことも総じて光より影にフォーカスをあてて書かれているので、現代からするとマイナス面ばかり強調し過ぎているように感じてしまうかもしれません。
でも、山河深く災害の多い日本であるがゆえに、実は当時の人のリアルな感情を映し出しているのかも。昔の人々の生活の貧しさが偲ばれます。
では、近隣の国の描かれ方はどうでしょう。
加賀「爪を隠して身を密かに持つ。武士は大人しやかで尖なるところなく武勇の功を秀づることを好まず畳の上の調儀で身を成り立たそうと思う。他国に合戦ありても自国を全うして出づる事を好まず」
越前「双びなき智恵国。優れたる弁舌だが高慢で底意地悪い。軽薄で頼もしきようで詰まるところつれなし」
越後「勝つ事を好む気象多し。勇を励み痛きといふことを痒きといふ。臆する気は少なけれど後度の締まりを考えざるなり」
飛騨「健直にして愚かなり。日本広しといへども我が国に如くことなしと思ひ、他国の望みもなし。井の中の蛙大会を知らざるがごとし」
めちゃくちゃな叩きようですね(笑)。ただ、それぞれ後で「勇敢だ」など良いところも書いてありますが、良いところは地域特性がほとんどないようです(苦笑)。
批判は緻密に鋭くして評価は軽くさらりと。そして自分のことは棚にあげる。マスコミやSNSなどで誹謗中傷が話題になるごとにそう感じてしまいますが、日本人は昔からなんら変わってませんね。
さて、「侫」の気質のある富山人。もともとは自然の厳しさ、災害の多さに端を発しているようですが、現代もそのままでしょうか、それともポジティブに変わりつつあるでしょうか。
そこまでねじけてないけど、少しそんなところもあるかな…。大方そんな感想かもしれませんね。災害の多い風土に対策を積み重ねて自由平穏な暮らしになり始めてからわずかしか経ってないですし、いまだ小さな災害は忘れる間もなくやってきています。
いろいろ厳しいことやイヤなことは多いけど、それを乗り越えてポジティブに生きていこうという高い志。売薬さんをはじめ富山人の良いところして評価される気質ですが、これこそが世代を越えて富山人を特徴づけるマインドで、これまでもそうですが、これからも受け継いでいくべき地域の財産かもしれません。
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