4.社会の分断を生まないために

エマニュエル・トッドやマイケル・サンデルと言った世界のオピニオンリーダーが、社会の分断について語っておられます。

それぞれ専門分野が違いますし、圧倒的な知識や経験から語られる言葉は文脈の違いとして表れますが、驚いたのは、お二人の結論がまったく同じこと。

曰く、行きすぎた能力主義や高等教育の階層化により、エリートと大衆に社会が分断されている。

アメリカのいまは、民主党がエリート、共和党が非エリートを母体とするとされてますが、以前は労働者や農家の貧しい方々が民主党、資本家が共和党を応援していた構図でした。いつの間にか資本力の意味で逆転してしまったのと、エリート・非エリートという要因で説明した方が正確にアメリカ社会の現状を捉えているようです。

アメリカのエリートは恵まれた自分達の環境の中で閉鎖的につながってしまい、恵まれない人達の声に耳を傾けない現象が起きているとのこと。日本はそこまで分断が進んでないとのことですが、お金持ちが子どもに良い教育や経験を積ませ、貧乏人は日々の暮らしで手いっぱいという構図は、世代を越えて受け継がれてしまう負のスパイラルとなり、さらに社会の分断を深めてしまいそうです。

マイケル・サンデル氏は「エリートは謙虚になれ」と言っておられます。エリートになれたのは自分に能力があったからと考えがちだが、実は親の資金や周囲の支援に助けられて今の地位を築くことができているので、そのことに感謝しなければならないと。心理学で言うところの「帰属の錯誤」ですね。人は弱いもので、成功は自分の能力、失敗は自分以外の環境に理由を求めてしまいがちです。

日本でも格差問題が叫ばれるようになりました。まずは所得格差にスポットライトがあたって賃金アップで分厚い中間層の回復を目指しています。

均質な日本社会とは言え、アメリカを憧れる性向が強いがゆえに、放っておくと分断社会を招くことになりかねません。多様性と包摂が大事な時代。立場の違う人達や困っている人達の声に真摯に耳を傾けていきたいものです。