18.久泉迪雄さん

人との出会いを大切に

辺見じゅんさんは、私の忘れ得ない大切な歌人です。あの人は、ふっと亡くなってしまわれた。あの人も悲喜こもごもの人生を背負った歌人、文学者だったと思うのです。

月光のしずかに遷る夜半に居て畳に伸びし影に手を置く

これは、私の歌集「塔映」の最後に置いた歌ですが、辺見さんは、平成二年七月号の「短歌」(角川書店)で、この歌を「上句の冴えざえとした月の光と、下句の静謐な叙情は、歳月を経たいのちのきらめきを感じさせる」と評してくださった。その後、折にふれご一緒させていただきました。辺見さんと出会えたことも、私の人生の大きな財産です。

いろいろ出会うことは世の中にたくさんあると思うのですが、生きる意思として、自分は自分の人生をいつも前向きに見つめて、そして、なまくらしてはいけないと思います。人間は、努力して、苦労して鍛えられるもので、それが人間をつくっていくのです。当然のことだけれどそれを大事にしてほしい。毎日うかうかと過ごしているといつの間にか時間は過ぎていく。しかし、今の時間が大切だぞと思って、自分はどう生きたらいいか、絶えず考えていくことが大事だと私は思います。

やはり出会いにつきると思います。出会いあってこそ人生が豊かになる。すべてのものの出会い。だけど、人がやっぱり大事でしょう、一番。人との出会いを大切に、です。

街を歩くと、みんな物質的には豊かな顔をしているけど、いろんな人生を背負っているだろうと思うのです。人を愛するという気持ちは、やはり、大事にしなければならないと思います。人のあたたかさというものも大事ですね。

私が学校の教壇に立ったのは富山工業高等学校が最後ですが、最後に担任をした学年が二クラスありました。その二つのクラスが、卒業後の謝恩会の時に、毎年一月三日午後三時に、必ず案内なくても集まれよと。場所も決めて、そういう約束をして終わったのですが、いまだに続いているのです。本当にこれは感心するくらい。卒業したのはニクラスで90人ほどですが、いまだに15,16人集まるのです。これもあまりないことではないでしょうか。

人との出会いを大事にする。どの出会いも同じです。出会いが人生の全てでしょう。それを大切にするということが人生の意味じゃないでしょうか。

(2021年久泉迪雄の書斎から)

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