15.若者は自分を楽しむー天地人

「自分」氾濫の時代という。「自分発見」「自分探し」「自分に忠実に」。そして若者が一番好きな言葉は「自分は今、輝いている」。

かつて若者は、社会や集団、会社のため自分を犠牲にして我慢してきた。だが、今の若者の多くは我慢という言葉と縁遠い。単に根性が足りないのではない。我慢することは「自分を偽ることであり、悪いこと」と理解している。反対に自分の心に忠実であることを、よしとする。

こんな話を日本青年研究所長、千保保さん(富山市出身)が『マサツ回避の世代』で書いている。モノがあふれた現代で我慢するのは「個」を失うことと感じるそうだ。ここが古代ギリシャ時代から続く「今どきの若者は」論と異なる。従来は「責任がついて回れば」「親になれば」という具合に年を取るとともに成長すると見られていた。だが、年代フレーム論でくくれない新しい状況が生まれている。個人主義の波が初めて日本に押し寄せてきたとも言えるだろう。

富山県内の企業、官庁では新入社員が職場に配属され、新しい戦力として期待されている。もちろん「我慢」することを教える上司が多い。だが、「本当に分かっているのかどうか」との嘆きもあるそうだ。では、どうすればいいのか。阪神大震災の若者ボランティアがこう言っている。「自分が楽しんでやっているんです」と。そうした感覚をうまく生かすことだ。

(平成7年4月23日、北日本新聞朝刊コラム天地人より転載)

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